>>ENGLISH

研究主題

20世紀後半以降,決定論的カオスを典型例とする非線形現象の研究が大きく進展してきました。そして,自然や人工を問わず,世の中に実在する複雑な諸現象を解明し新しい工学応用技術を開発するためには,普遍性を追求する分野横断的基礎理論と個々の現象の個別性の本質に踏み込んだ深い洞察の双方に立脚した,非線形システム的理解が重要であることが明らかになってきています。
本プロジェクトにおける普遍性と個別性を兼ね備えた「複雑数理モデル」の理論研究と応用研究は,数理的方法論が有する普遍性,横断性,そして多分野への応用可能性に基づく,21世紀の新しい科学技術の在り方としての分野横断的なトランスディシプリナリー科学技術のひとつの具体的成功例を呈示することを目的としています。そして特に,生命情報原理とも密接に関係する,「複雑系で計算する」という新しい発想に基づく複雑系コンピューティングの理論・応用研究を通じて,新しい原理による高度情報処理技術の開発を目指しています。

研究内容

本プロジェクトは,非線形システムモデリングとその応用に関するカオス工学や数理工学をベースとして,非線形科学,生命科学,情報科学,工学および社会科学などの多くの分野と関連する「複雑数理モデル」論に関する基礎理論および数理解析手法を構築します。そして,その成果を各分野へ適用して多様な応用研究を展開するとともに,その結果をさらに基礎理論にフィードバックして「複雑数理モデル」論の体系化を目指します。複雑数理モデルの具体的な応用研究に関しては,特に重要性と緊急性が高いと思われる,(1)生命科学分野における遺伝子・タンパク質ネットワークやニューラルネットワークなどの生命情報ネットワークの動的情報処理原理,(2)情報科学分野における複雑系コンピューティングの理論と応用・実装技術,および(3)社会システム分野における新型感染症(たとえば新型インフルエンザや重症急性呼吸器症候群SARSなど)の流行予測・防御対策の研究などに重点的に取り組んでいます。

複雑数理解析グループ

現在の主要研究課題

  1. 複雑数理モデリング理論の体系化
    カオス時系列解析や決定論的力学系および確率論的力学系の数値解析・分岐解析を中心として、複雑数理モデリングの体系化の基盤を構築する。
  2. 複雑ネットワークモデリング
    生命ネットワークや社会ネットワークなど、様々な実在複雑ネットワークの数理モデル解析を行なう。

今後の主要目標

複雑生命情報グループ

現在の主要研究課題

  1. 生命情報システムの数理モデル解析
    遺伝子・タンパク質ネットワークやニューラルネットワークなどの生命情報システムの 数理モデルの非線形ダイナミクスと生命情報原理に関する基礎研究を進める。
  2. 新型感染症の数理モデル解析
    新型インフルエンザ等の新型感染症の流行の時空間ダイナミクスに関する数理モデルを構築する。

今後の主要目標

複雑系計算グループ

現在の主要研究課題

  1. 複雑系計算の基本モデル構築
    大容量・高速・超並列・ロバストコンピューティングシステムのための複雑系計算基本 モデルを構築する。
  2. 複雑計算応用技術の開発
    カオス動的連想メモリ、カオス最適化、フラクタル情報圧縮、ダイナミカルデータベース モデリングなどの応用技術を開発する。

今後の主要目標