日時:10月9日(木) 15:00〜
場所:東大生研Ew-305
講師:一杉裕志先生(産総研 脳神経情報研究部門 )
タイトル:「脳の情報処理原理の解明状況」

アブスト:
 BESOM モデルと呼ぶ、大脳皮質の神経回路モデルを設計した。このモデルは
4つの機械学習技術(自己組織化マップ、ベイジアンネット、独立成分分析、
強化学習)をエレガントに組み合わせたもので、脳の機能を再現させるモデル
として計算論的に妥当な特徴を持っている。そして、計算論的に導かれたアル
ゴリズムを実行する神経回路は、驚くべきことに大脳皮質の主要な解剖学的特
徴と非常によく一致しており、大脳皮質の情報処理原理を説明する正しいモデ
ルであることはほぼ間違いないと考えている。このモデルを用いて、概念獲得、
パターン認識、行動獲得、思考、言語獲得などの、大脳皮質の主要な機能を再
現する具体的方法も明らかになりつつある。この神経回路モデルは計算機上で
効率的に実行可能であり、工学応用の面でも有望である。筆者は現在、計算機
シミュレーションに向けてモデルの詳細化に取り組んでいる。このモデルによ
り、人と同じような知能を持ったロボットの実現が現実のものになりつつある
と考える。

参考: 一杉裕志、「脳の情報処理原理の解明状況」
産業技術総合研究所テクニカルレポート AIST07-J00012, Mar 2008.
http://staff.aist.go.jp/y-ichisugi/besom/AIST07-J00012.pdf