日時:9月9日(金)15:00〜17:00 場所:東大生産技術研究所Dw601号室(駒場リサーチキャンパス内) 講師:池谷 裕二先生、東京大学大学院・薬学系研究科・助手 (http://gaya.jp/ikegaya.htm) Title: 「大脳皮質の自発活動 ─ 常同性と活動予測性とグラフパターン」 Abstract:  脳は外部情報が与えられなくても自発的に活動している。従来こうした外界か ら孤立した神経細胞の活動は無用なノイズとして解釈されてきたが、近年我々 は、自発活動には偶発レベルを越えた秩序が潜んでいることを明らかにした。カ ルシウムイメージング法を用いて皮質切片標本から大規模な神経活動記録を行 い、自発活動のパターンを数理解析したところ、その時空構造には特定の繰り返 し配列(シークエンス)が多数含まれていることが判明した。幾多の方法でデー タをシャッフルすると、いずれの場合もシークエンス数が有意に減少することか ら、シークエンスの存在は偶発的な帰結では説明できないと考えられる。シーク エンスを形成する神経活動は、古典的なホップフィールド回路とマッカロー・ ピッツモデルを組み合わせるだけで、高い正確性をもって予測できることがわ かった。この手法によって取得された結合重みの行列から強い結合をもった回路 を抽出すると、シークエンスを担う局所回路が比較的に選択的に選択されること がわかった。また現在進行中の研究ではあるが、視床を刺激すると流動的だった 自発活動が特定ノイズパターンに固定されることから、外部入力は、皮質応答を 誘発するのではなく、遷移する内部状態から特定の「相」を選択する役割を演じ ていると解釈される。つまり、静的な受動システムではなく、内発的に情報を生 み出す「自発創生システム」として大脳皮質を捉えなおす必要がある。