日時:9月5日(月)15:00〜17:00 場所:東大生研Dw-601 講師:青柳冨誌生先生 京都大学大学院情報学研究科 複雑系科学専攻 複雑系構成論講座(複雑系 基礎論分野)教授  (http://www-fcs.acs.i.kyoto-u.ac.jp/~aoyagi/DATA/TOP.html) タイトル: STDP学習により形成された神経ネットワークにおける同期スパイクによるア トラクター間遷移 アブストラクト: 認知や行動に伴う神経の同期活動が近年多くの神経系において見つかっている。 しかし、その機能的役割は未だわかっていない。少なくともそのような生成 された同期活動は、再び入力シグナルとして神経ネットワークを駆動しその機能 に影響を与えると考えるのは妥当であろう。一方、シナプス結合の学習ルールに 関しては、タイミングに依存するシナプス可塑性(Spike-Timing Dependent Plasticity)が発見されており, これにより外界の事象の経験的な因果関係を学 習することが、神経活動の時間構造にコードすることで可能となる。今回、ある 種の外界の事象を刺激としてSTDPにより学習した神経ネットワークを数理モ デルとして構成し、その機能が入力の同期特性によりどう変化するのかを調べ た。結果として、非同期的な一様入力で神経ネットワークを活性化している時は 連想記憶的特性を示し、初期刺激に最も近いパターンに収束した。興味深いこと に、一様入力を一時的に同期させると想起パターンが不安定化し、学習時の順番 に従って新しいパターンへと遷移することが判明した。さらに、同じパターンか ら違うパターンに遷移させることも適切な学習パターンを学習すれば可能であ る。このことから、実際の神経系の同期活動も次の行動へ移るシグナルとしての 役割を果たしているかも知れない。また、遷移のメカニズムが可能なパラメー ター領域を理論的に計算した結果、シナプスの時間遅れなどにおいて特別な値で はなく十分広い領域でこのメカニズムが実現可能であることがわかった。以上の ことから、これは状況依存的なタスクを可能にしている神経基盤となり得るかも 知れない。